THIS IS A BIKE


『これは自転車です。』なんて普通に訳してはいけません!『A』のトレードマークに象られた“道”は、それぞれが走っていく道、それを彩る景色、その先にある未来‐自転車という相棒と生きていく人生
という意味が込められているのです。
このインタビューでは、様々なフィールドで活躍する人の自転車との出会いや、自転車と共にある人生、自転車を通したライフスタイルを通して、それぞれの『THIS IS A BIKE』を紹介していきます。

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Mo & Gary

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ドイツ・ベルリンでサイクルカルチャーカフェ『KEIRIN』を営む元メッセンジャーの二人(Motimer、Gary)に、87犬がインタビュー。
今年(2009年)の9月に東京で行われるメッセンジャー世界選手権大会のことや、現在のヨーロッパの自転車事情など、長年自転車と関わってきたベテランならではのコメントが聞けました。
ベルリンへ行った際には、ぜひ立ち寄ってみて下さい。

 

02

ケイリン サイクル カルチャー カフェとは?

Gary

ケイリン サイクル カルチャーカフェ」は、2004年にメッセンジャーだったゲイリーとモーティマーの二人でオープンしました。
そもそもお店をオープンした理由は、19世紀後半に発明されて以来、様々な発展を遂げてきた自転車の豊かな文化や歴史に触れられる場所を提供しようと思ったからです。
このカフェは、サイクリストの憩いの場や、自転車のショップとしてだけでなく、レースの本や映像を見て楽しんだり、むかし活躍した自転車を見たりと、自転車資料館としての働きもあります。
自転車を、ただA地点からB地点まで移動するための手段として考える以上の捉え方をしている人のためにあります。

 

03

Gary

"ケイリン"という名前にしたのは、私たちがトラック用の自転車が好きで、さらにトラックでレースをするのも好きだったのでちょうど良かったし、ケイリンは見た目がカラフルで、長い歴史もあり、とてもエキサイティングなスポーツなので、これがいいと思いました。
いまお店は6年目を迎え、新旧のトラックバイクやパーツ、メッセンジャーバッグ、ウェアやアクセサリーなどを扱っています。
お客様は、レースの生中継や自転車の映像作品を見たり、また店内にある自転車雑誌を見ながらコーヒーを楽しんでいます。
店内には、過去スプリント世界大会を10連覇した中野浩一さんから譲り受けた「ナガサワ」フレームや、旧東ドイツのナショナルチームが使ったトラック競技用のチネリのタンデム自転車などが展示されています。」

04

1993年にベルリンで行われた第1回CMWC(メッセンジャー世界選手権大会)の時は既にメッセンジャーだったの?

Mo

CMWCの少し前に始めたんだけど、その時の出場資格は6ヶ月以上の経験者限定ってことで、俺はルーキー扱いされて参加できなかったんだ。


Gary

俺は91年からメッセンジャーとして走ってたから参加したよ。

05

どうしてCMWCをやろうって動きになったの?しかもベルリンで。89年の東西ドイツ統一の動きで、メッセンジャーの間でも何かそういう機運が高まったのかな?

Mo

まったく関係ない(笑)。 NYにいたジェームズ・ムーア(※1)がワシントンスクエアパークで世界戦の構想を思いついたらしく、その後たまたまベルリンに移住してきて、元DCのメッセンジャーのマイケル・オゾン(※2)と共に案を練って、それで実現させたんだ。

Gary

もちろんベルリンのアヒム(※3)たちもスポンサーを見つけたりして協力したけどね。最初はCMWCじゃなく、CMC(Cycle Messenger Championship)だった。ちょうどベルリンの街としても大きなスポーツイベントを開きたかったっていう背景もある。

 

※1 ジェームズ・ムーア:以前NYでも走っていた、ベルリンのメッセンジャー
※2 マイケル・オゾン:以前ワシントンDCでも走っていた、ベルリンのメッセンジャー
※3 アヒム:MESSENGERという会社のボス

 

06

今年いよいよCMWCがアジア初の、東京で行われるけれど、それに対して何か期待することはあるかな?

Mo

オーストラリアはアジアじゃないのか?(違うよ(笑))そうか。 CMWC東京については心配している。

何に?

Mo

参加者のうち、メッセンジャーの割合が少ないんじゃないか、って。
日本は誰でも参加自由ってスタイルだろ? だからメッセンジャーではない奴とか元メッセンジャーがたくさん参加して、現役のメッセンジャーが少なくなるんじゃないかって。
自分としては、本当ならメッセンジャーオンリーで競い合いたい。または、誰でも参加自由にするなら、少なくとも決勝レースは現役メッセンジャーだけでやるべきだ。

07

なぜメッセンジャー限定にこだわるの?

Mo

2000年のフィラデルフィア大会を覚えてるか?コペンハーゲンからロードレースのトップ選手たちが大勢参加して、勝ちに来てただろ。結局DCのジェイソン以外、トップ10は全てあいつらが占めたじゃないか。
CMWCはメッセンジャーのための大会だ。メッセンジャーじゃない奴らがそこで勝ったって、誰がリスペクトするんだ?
デリバリーで過酷な毎日を繰り返すメッセンジャーにスポットが当たらなければ意味がないんだ。だからせめて決勝レースは現役メッセンジャー限定に絞るべきだ。

 

08

まぁ、確かに。別に自転車の世界一を決める大会ではなく、メッセンジャーの中で誰が早いかを競う大会だもんね。けど、あのコペン軍団はてっきりメッセンジャーかと思ってたけど、違ったんだね。他に何か期待することってある?

Mo

予選を長くして欲しいね。わざわざ遠いところまで来て20分の予選に出て、落ちたらおしまい、じゃ寂しいだろ。予選も最低1時間は欲しいね。
それに、大会ではもっとメッセンジャーの女子率が高くなってもいいはずだ。世界的にもそうだけど、女性のメッセンジャーがいま少ない。もっと女性のメッセンジャーが増えないと。

09

女性は多いに越したことはない(笑)。ところで、二人はベルリンにある自分たちのお店の名前を『けいりん』にしているけど、そんなにケイリンが好きなの?

Gary

ロードレースより(インドアの)トラック競技の方が興奮するんだ。それに、ヨーロッパのスタイルではレースは2人でするんだけど、9人でレースする方がより展開が面白い。」
Mo 「お店の名前を『けいりん』にしたのは、何か別の文化圏の分かりにくい名前がいいな、と思ってて、名前の由来にしても、新しいものより古くて伝統のあるネーミングが良かったから。
ケイリンというトラック種目が日本では伝統があり、文字として見ても、ひらがなの『けいりん』がカッコいいと思って決めたんだ。9色+1色でカラフルなのもいいと思う。
ヨーロッパでは、メイドインジャパンの高品質の証として、NJSマーク(※4)がリスペクトされてるんだ。それで今回も買いに来てるわけ。

 

※4 NJS:日本自転車振興会。競輪で使用できる公認の自転車やパーツにのみ付いているマーク。

10

別にNJSだけが高品質ってわけでもないんだけどね。じゃあ、ベルリンでも固定ギアは流行ってるの?

Mo

大体2年前くらいから急に固定が流行ったように思う。いま街で自転車乗ってるヤツの3~4割くらいが固定に乗ってるんじゃないか。

日本と同じくらいのタイミングだね。それでも日本はロードレーサーの方がまだまだ多いかな。MTBも多いし。 ベルリンで固定が流行ったきっかけって何だったの?

Mo

さあね。06年にMASH(※5)やPEDAL(※6)が来て、その影響は強いんじゃない?ベルリンもロードレーサーやシクロクロスは同じように多いよ。とにかくピストのフェイクメッセンジャーが増えて戸惑ってる。

 

※5 ピストブームの火付け役になったSFのピストクルーによる映像作品。
※6 メッセンジャーのリアルな生活を迫ったドキュメンタリー。

11

『けいりんベルリン』のお店の近況はどんな感じ?

Gary

12月~2月は雪と寒さがひどくて、自転車の商売はひどかった。3月になってようやく雪も融けて良くなってきたよ。
この4月でウチも5周年を迎えるけど、あっという間だったな。最初の2年半は、全然繁盛しなくて大変だった。でもそれからの2年半は忙しくなってきたよ。
2004年にビルの隅にオープンして、2007年には同じビルの2つ隣のテナントに店を拡大して、そして去年、ついに真ん中のテナントも自分たちのお店にして、いまは当初の3倍に広がったんだ。

どんどん大きくなっていて凄いね。開店時にやってたサイクルカフェはまだ続けてるの?

Mo

カフェは、ビルの真ん中のテナント部分で続けてるよ。大きなテレビを2つ置いて、ツールドフランスやジロの時期は毎日LIVEで見せるから、結構混むんだ。今後はレンタサイクルや中古自転車の販売もやっていきたいね。