THIS IS A BIKE


『これは自転車です。』なんて普通に訳してはいけません!『A』のトレードマークに象られた“道”は、それぞれが走っていく道、それを彩る景色、その先にある未来‐自転車という相棒と生きていく人生
という意味が込められているのです。
このインタビューでは、様々なフィールドで活躍する人の自転車との出会いや、自転車と共にある人生、自転車を通したライフスタイルを通して、それぞれの『THIS IS A BIKE』を紹介していきます。

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Dohi Shiho

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土肥さんと言えばツール・ド・フランスの現地リポートが有名だと思うんですが、どういうきっかけでロードレースの世界に入られたんですか?

以前から色々と雑誌の記事は書いていたんですが、2000年にファンライドの企画で、ロードの三浦恭資さんのキナン合宿潜入記を担当したことが、この世界に関わるきっかけだったと思います。
当時、MTBの草レースには出ていたんですが、ロードの世界は心理的な駆け引きとかレース展開とかが重要で、奥が深くて面白いと思いました。でも当時は世間から十分注目されてもいなかったので、「私が協力できること」を考えたら、マスコミに取り上げてもらって、もっともっと注目してもらうのがいいんじゃないかと思ったんです。
それで色々と調べたら「どうやらツール・ド・フランスなるものが、最高峰のレースらしいぞ」ということが分かって、プロカメラマンに同行させてもらったのがツールと私の始まりです。

 

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レース速報や、レース前後の選手のインタビューなど、土肥さんが持つ情報は今や一番新鮮で、日本のツールファンは凄くあやかってると思います。
レース自体、フランスを一周するじゃないですか。その同行取材って、どんな一日なんですか? 大変だったことなども教えて頂けますか?

それはもう、慌しい生活ですね。
全てレースに合わせて動かないといけませんから。
朝起きて荷物をまとめたらスタート地点へ行って、選手たちのその日の様子をチェックします。
スタートしてしまえば、200km先のゴールまでは、一人で車の運転。ゴール地点に着いたらモニターでレース展開を確認し、誰に何をインタビューするか整理します。
ゴールした選手達がバスに乗るまでの5分~10分が勝負なので、走ってコメントを取ります。
取り終えたらすぐにプレスセンターでまとめて、日本と連絡。
それからホテルに向かうので夜9時とか10時になっちゃって、食事もそれから取るんですが、お店が閉まるのも早く、コンビニなんか向こうにはないので、ギリシャ人がやっているシシカバブーとかよく食べていました。
そういう店なら夜遅くまでやっているんですよね。

 

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ある時はゴール地点から100km離れないと泊まれるホテルがないってこともあったし、チェックインできなかったこともありました。
洗濯は夜中に済ませて、翌日車内で干す。だから車の内側から窓に目隠ししたり、車の中はかなりメチャクチャ(笑)。
レンタカーは1ヶ月間で10万円ちょっとくらいで、大体8000kmは走りますね。普通の人が1年掛けて走る距離を、1ヶ月で走るわけです。そんな取材を2000年から10年間、自費でやってきました。
大変なことも多いけど、毎年ツールの度に顔を合わせる人たちがいるので、その人たちと近況を確かめ合うことも楽しいし、自分にとってツールを追いかけることは凄く大事です。

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今まで色んな選手を見てきたと思いますが、お気に入りの選手っているんですか?

スペイン人なんですが、フアン・アントニオ・フレチャという選手。
今はイギリスのチームスカイ所属で、気さくな彼は、私がツールに行き始めた頃からよく声を掛けてくれました。
フレチャはツール・ド・フランスのような何日もかけて行うレースよりも、パリ~ルーベなどのワンデーレースで勝つことを重視している選手で、天候が悪いほど燃えるというか、すごい雨が降ってる時でも「雨よ、もっと降ってくれ!」て思うタイプ。
辛いレースほど自分に勝つチャンスがあると思っていて、そういうフレチャの男気とか、生き様が好きですね。応援したくなる。
これまでパリ~ルーベで、3位と2位にはなったことがあるんですけど、肝心の1位がまだない。
だから本当に彼に勝って欲しいと思うし、もし彼が引退したら、自分ももうツールを追うのはいいかなーって思ってしまうほど、自分にとっては存在の大きい選手ですね。

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最近、民放のツール・ド・フランスの番組がどんどん少なくなり、ツールファンには寂しくなってしまいましたが、伝える側の土肥さんとしては、どう思いますか?

確かにフジテレビの深夜枠の放送は、どんどん減って、今はなくなっちゃいましたが、放送されてた頃も、ダイジェストばかりで、レースの模様を5~6時間ずーっと流してなかったですよね。
ちゃんとレースを見たい人にとっては、実は、むしろ環境が良くなったと思います。
今はCSのJ SPORTSが、レース途中…ときにはスタートから最後まで見せてくれる。
やっぱりロードレースは結果だけ見ても面白くない。展開が大事だから、できれば最初から最後まで見て欲しい。
民放だけどダイジェストしか見れないなら、有料放送でもフルで見れた方が断然いいと思う。ツール以外のレースも放送してくれていますからね。

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話は変わりますが、土肥さんは広島出身だったと思いますが、横浜に長く住むようになった理由は何ですか?

確かに17歳頃までは広島で、それから筑波、取手、早稲田と移り住んで、横浜に来ました。
初めて来た時に、街の雰囲気がすごく気に入って、ここなら骨を埋めていいかもと思えるほど、自分の居場所を感じた。それで最初は元町辺りに住んで・・・。
もう13年になりますね。
それから、今の旦那の誘いでMTBのレースに参加するようになり、彼が大桟橋の手前に「BIKE TOWN」という自転車屋を開いたこともあって、今は自転車と横浜にどっぷり浸かっています。

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最近の自転車ブームについて、どう感じていますか?

喜ばしいことだと思う。ずーっとそうなったらいいな、と思ってやってきたことがやっと叶った感じ。
「やっと分かってくれたか」と。
宇都宮のジャパンカップの観客を見ても、もの凄い増えたと思うし、「日本にもこんなに自転車ファンがいるのか!」ってヨーロッパの選手たちもビックリしていた。
去年、フミとユキヤがツールで活躍したこともあったし、ロードは今盛り上がっていますね。
これを一過性のものにしないよう、楽しさを伝え続けないと。

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そのためには、女性の乗り手がもっと増えることが大事だと思うんですが、土肥さんはどう思いますか?

知れば知るほど、やっぱり自転車とかレースは男の世界なのかなって思います。
でもロードレーサーって一番力を使わずに、早く遠くへ行ける乗り物だから、体力のない女性に向いていると思います。
よく「初心者はクロスバイクから」って耳にしますが、何台も買うものじゃないし、長く乗り続けるものだから、1台目からしっかりしたロードレーサーを買った方が私はいいと思います。
それと、女性は自転車をもっと気楽に楽しむのがいい。


私、実は空手を9年やってて、大学の時は全日本代表の強化指定選手になったくらい運動自体はやっていたんですが、メカとかよく分からなかったし、いまの旦那が色々と教えてくれてなければここまで深く自転車に関わることはなかったと思います。
例えば女性の場合は、サドルをちょっと前下がりにしてあげると楽、とか。
女性サイクリストを増やすには、まずは自転車を好きな男性が、彼女とか奥さんとか友だちを、自転車に乗させるところからじゃないかな。

乗った後も色々とハードルがあるから、その都度そのハードルを超えられるように男性たちが優しく世話をしてあげることが大事。パソコンの上達みたいにね。
世の男性諸君!素敵にエスコートを宜しく!と言いたいですね。

 

それと、売ったら売りっぱなしの自転車屋さんもあるから、自転車選びの前に、ショップ選びが大事だと思います。
うまの合う店員さんがいて、親切に色々と教えてくれるお店で買うのがとにかく一番です。
自転車にも教習所のような存在は必要だと思うし、自転車屋さんが責任もって初心者のフォローも行うべきだと思います。

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最後に、土肥さんが今後取り組みたい事とかあれば、教えて下さい。

これまで取材で行って良かった所に、お店のお客さんとかを連れていきたい。
「自転車は持った。でもどこへ走りに行けばいいんだ?」という方が多いと思うんです。これからはソフトの充実が大切なんですよ。
あと、実はMTBで山に行きたいんですよね。
私が初めてMTBで山に入った時に、土の匂いとか、季節感とか、汗とか、ずっと忘れていた懐かしいことが再発見できて、「これだーーー!」って思ったんですけど、あの気持ちをもっと沢山の人に知ってもらいたいです。
ヨーロッパでは今MTBが大ブームになってるし、日本も10数年ぶりにMTBブームが来るんじゃないですかね。
それと、ツール・ド・フランスにもどんどん行ってもらって、直接レースを見てもらいたいです。とは言っても一人で回るのは難しいし、スタート地点にも辿り着けないだろうから、自分の経験を生かしてツアーの企画とかやれたらいいな、なんて思っています。